独り言3◆気分が凹んだ時に開く本◆

平穏無事に日常生活を送れれば、それに越したことはないと私自身は思っています。ですが、人生の吉凶に波があるように気分にも波があり、些細な出来事で気分が落ち込むことがあります。そんな時に、適当なページをそっと開いて読む本があります。それが菜根譚という本です。

菜根譚とは

中国明代末期の古典で、著者は洪応明(自誠は字)。人との交わり方を説いた道徳的な処世訓となっている前集222条と、仕事を引退し老境に入った生活の楽しみ方を説いた後集135条の全357条の語録から成っている随筆集です。

思想的には儒教・道教・仏教の3つの良いところをミックスさせたものとなっており、古典ではありますが、現代でも通じる含蓄に富んだ語録が多く、多くの著名人が愛読書とした処世訓の傑作というのも納得です。

個人的な読み方のおススメ

どの出版社から出版された本でも構わないのですが、それぞれの翻訳者の個性でしょうか、原文の解釈の仕方や微妙なニュアンス、表現方法など些少な違いはあります。そこは自分自身の好みで選択しましょう。読みやすさや文体の好み、構図の違いなど表現の差によってスッと胸に入る度合いが異なりますからね。

私自身は、文句を言われて嫌な気分の時や、ミスして落ち込んでいる時などに、手にとってページをランダムに選択します。そして、そのページに書かれている内容を何度も繰り返して熟読するのです。「そんな馬鹿な事…」と思うかもしれませんが、悩んでいるときや気分が落ち込んでいる時には案外その内容の対応にピッタリな一文が出てくるものです。

ランダムに選んだ語録

私自身が所持している岩波文庫の菜根譚から読み下し文と訳文で紹介します

小処に滲漏せず、暗中に欺隠せず、末路に怠荒せず。纔に是れ個の真正の英雄なり。

小事だからとて手ぬかりするようなことはなく、人が見ていないからとて欺きかくすことはなく、落ちめだからとて投げやりになることはない。このようであってこそ、初めてひとかどの人物である。

菜根譚/今井宇三郎訳注/岩波文庫/132ページ~133ージより抜粋

…実に耳が痛いお言葉です。確かに、信念を持って行動している人は、他人の目や評価など気にもしませんし、世間的に落ち目となっている状態でも淡々と行動しています。なるほど、こういう人が本当の意味での「立派な人」といえるのでしょう。人の目を気にしている私自身は、まだまだ精進が足りないとお叱りを受けたようです。

辞書のように手元に置いておく

私自身の読み方は特殊なのですが、普段から手近なところに置いておき、人間関係に悩みがあるとき、また、生き方に迷いがあるときなど困ったときに、フッと手にとって心にささる箇所読んでみる、人生の辞書のような使い方をしてみてはいかがでしょうか。